AIで作ると言われた開発費は安くなるのか?見積もりで確かめる点

公開日:2026-11-05/AnchorUp コラム

「AIで作るので安くできます」と言われても、それだけで開発費が下がるとは判断できません。公開された調査を見ても、AIで速くなったという結果と、遅くなったという結果の両方があります。 速くなるかどうかは、作るものや開発者の状況によって変わります。

工程を書類で確かめる2人の後ろ姿

見積もりで確かめるのは、AIを使うかどうかではなく、どの工程の作業量が、何と比べて、どれだけ変わるのかです。この記事では、調査結果の読み方と、見積もりを受け取った時に確かめる点を整理します。

AIを使うと開発は本当に速くなるのか?

条件によって結果が違い、一律には言えません。 公開されている調査をいくつか並べます。

調査結果を軸に置くと、GitHubの2022年の実験は55%速く、METRの2025年前半の実験は19%遅く(古い結果と説明)、METRの2026年2月の報告は18%と4%速い推定(信頼性が低いと説明)です。どの調査も条件と時期が違います。

調査 対象 結果
GitHub の2022年の実験 95人の開発者が、同じ小さなサーバーを新しく作る Copilot を使った組が55%速く完了
METR の2025年前半の実験 経験豊富な開発者16人が、普段関わるオープンソースの課題に取り組む AIを使うと19%長くかかった(METR は現在、この結果は古いと説明)
METR の2026年2月の報告 同様の実験の続き(2025年8月開始) 元の参加者で18%、新規の参加者で4%速くなる推定。どちらも誤差の幅が大きく、METR はデータの信頼性が低いと説明(実際はより大きい可能性にも言及)
DORA 2025年の調査 世界の技術職 約5,000人への調査 80%超が生産性向上を実感する一方、30%はAIのコードをほとんど、または全く信頼していない

読み方の注意点が3つあります。

  1. 小さな新規の課題と、既存の大きなコードでは条件が違います。 上の表の1行目と2行目は、作業の性質が異なります。社内システムの改修は、既存のコードを読む作業が多くなります。
  2. 実感と実測がずれることがあります。 METR の実験では、開発者は実際には遅くなったのに、速くなったと感じていました。「速くなったはず」という説明だけでは根拠になりません。
  3. どの調査も、特定の条件での結果で、時期も違います。 METR は2025年の結果について、今のAIの影響を反映していないと考えていると説明しています。すべての開発者に当てはまるとも主張していません。

速くなっても見積もりが下がるとは限らないのはなぜか?

開発費はコードを書く作業だけで決まらないからです。 見積もりには、次のような工程が含まれます。AIの影響は工程ごとに違います。

工程ごとのAIの影響。要件定義と設計の判断は人が行い、実装とテストはAIの補助を使えますが、レビューは確認が増えることがあり、保守は読みにくいコードだと後で費用が増えます。

工程 AIの影響 確かめること
要件定義 業務の判断は発注側と人が行う 打ち合わせの回数と作業量
設計 案を出す補助はできるが、判断は人が行う 誰が判断し、どんな資料が残るか
実装 AIの補助を使いやすい AIを使う範囲、人が書く範囲
テスト テストを書く補助はできる 実際の動作確認を誰が行うか
レビュー AIが書いた量に応じて確認が増えることがある 人が読む範囲と基準
保守 読みにくいコードだと後で費用が増える 説明資料が残るか

実装が短くなっても、確認の作業が増えれば、全体の費用は変わらないことがあります。AIが書いたコードを確認せずに納品すると、品質を誰が確かめたのか説明できなくなるので、人の確認が要ります。

AIツールの利用料が増える点も見ておく必要があります。たとえば GitHub Copilot の個人向けプランの説明では、使った量とモデルに応じて消費が変わります。こうした費用を誰が負担するかは、見積もりによって違います。

見積もりでは何を確かめればいいのか?

工程別の作業量と、比較の基準を確かめます。 次の順に見てください。

  1. 工程別の内訳があるか。 「開発一式」では、どこが減ったのか分かりません。工程ごとの作業量や人数を出してもらいます。
  2. 何と比べて安いのか。 「通常より」と言う時の通常が何かを聞きます。AIを使わない場合の見積もりと比べているのか、感覚の話なのかで意味が変わります。
  3. 減った部分はどこに反映されたのか。 作業が減った分が、金額、納期、機能の増加のどれに使われたのかを確認します。
  4. 人が確認する工程が残っているか。 レビューとテストが、作業量として見積もりに含まれているかを見ます。
  5. AIツールの費用の扱い。 見積もりに含まれるのか、実費なのか、上限はあるのかを確認します。
  6. 追加費用の条件。 仕様の変更があった時の扱いは、AIを使っても別の問題です。
  7. 公開後の費用。 保守の範囲と、別の会社でも引き継げる資料が残るかを確認します。

金額が低いこと自体は、悪いことではありません。ただ、理由を説明できない安さは、後からの追加費用や、確認の省略につながっていないかを確かめる必要があります。

AIで作ったコードの権利や品質はどう確認するのか?

納品物について誰が責任を持つのかを、契約の前に確認します。 AIを使っても、発注側が受け取る物の条件は変わりません。特に次の3点は、AIを使う開発で聞いておきたい項目です。

他者のコードに似ていないか。 GitHub の説明では、Copilot が GitHub 上の公開コードと一致するコードを生成することがあります。頻度は、入力中に出る補完の提案で通常1%未満とされ、一致した場合に元のコードやライセンスを確認する機能も用意されています。開発会社がこうした確認をしているかを聞きます。

コードの権利はどうなるのか。 AI生成物の著作物性について、文化審議会の小委員会で説明された素案では、指示が「表現に至らないアイデアにとどまるような場合には、生成物に著作物性は認められない」と考えられるとされています。2024年3月に取りまとめられた最終版「AIと著作権に関する考え方について」にも同じ趣旨の記述があります。コードの権利の扱いは個別の判断になるので、契約書の権利の条項と合わせて確認してください。必要に応じて弁護士など専門家に確認します。

入力するデータはどう扱われるか。 社内の資料や顧客情報をAIに入力して開発するなら、使うサービスの規約とプランを確認します。開発会社が使うサービスの名前を聞いておくと、確認しやすくなります。

「AIで安くなる」と言われたらどう質問すればいいのか?

具体的な答えが返ってくるかどうかを見ます。 次の質問がそのまま使えます。

質問 確認できること
AIを使うのはどの工程ですか 使う範囲が具体的か
AIを使わない場合と比べて、どの工程の作業がどれだけ変わる見込みですか 根拠のある見積もりか
AIが書いたコードは誰が確認しますか 品質の責任者がいるか
AIツールの費用は見積もりに含まれますか 後から増えないか
使うサービスの名前と、入力データの扱いを教えてください 情報の扱いを説明できるか
別の会社に引き継ぐことになった場合、何が残りますか 特定の会社に依存しないか

見込みが外れることはあります。AIの効果は前もって正確には分からないので、「やってみないと分からない部分」を正直に説明してくれる会社の方が、話を進めやすいはずです。その場合は、一部の機能だけを先に作って作業量を確かめ、その結果を見て残りの見積もりを決める方法もあります。

まとめ

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参考(一次情報)

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