開発会社の見積もりにある「保守費 月額」は何の費用か?契約前に確認する項目
公開日:2026-11-05/AnchorUp コラム
見積もりの「保守費 月額」は、システムを公開した後も動かし続けるための作業に払う費用です。ただし、どの作業が含まれるかは見積もりごとに違い、「保守費」という言葉だけでは分かりません。 同じ名前でも、障害の連絡を受けるだけの場合もあれば、部品の更新まで含む場合もあります。

金額の高い安いを判断する前に、月額で何をしてもらえるのかを作業の単位で確認してください。この記事では、よくある作業の内訳と、契約前に聞く項目を整理します。
保守費にはどんな作業が含まれているのか?
障害対応、システムの管理、更新対応、問い合わせ対応が主な候補です。 総務省が自治体向けに公開しているシステムの管理、運用の解説でも、検討する役割として「システムの維持、管理」「システムの運用(トラブル対応など)」「システムのバージョンアップ対応」が分けて挙げられています。同じページの実証実験では、「セキュリティ管理、サーバールーム管理、ネットワーク管理、サーバー管理」を委託した例が紹介されています。
見積もりを読む時は、次の表のように分けて考えると整理しやすくなります。
| 作業 | 内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 障害対応 | 止まった時に原因を調べて復旧する | 受付時間、着手までの目安 |
| 監視 | 止まっていないかを見張る | 検知した時に誰へ連絡するか |
| 更新対応 | OSや部品の更新を当てる | 回数の上限、動作確認の有無 |
| サーバー等の管理 | 容量、バックアップ、証明書を管理する | バックアップから戻す作業も含むか |
| 問い合わせ対応 | 操作や不具合の質問に答える | 連絡手段、月の上限 |
| 軽微な修正 | 文言の変更などの小さな修正 | 「軽微」の基準 |
全部が含まれているとは限りません。表のうち、見積もりに書かれていないものは、含まれていないと考えて質問する方が安全です。
何も変えていないのに、なぜ毎月費用がかかるのか?
自社が何も変えなくても、システムを支える部品の側に期限があるからです。 例を3つ挙げます。
- プログラムの実行環境。 サーバーで動かす環境の1つである Node.js の公式ページは、「Production applications should only use Active LTS or Maintenance LTS releases.」と案内しています。本番のシステムはサポート中の版だけを使うように、という趣旨です。同じページには、長期サポート版について「typically guarantees that critical bugs will be fixed for a total of 30 months」とあり、重大な不具合の修正は合計30か月が目安です。それを過ぎる前に版を上げる作業が発生します。
- 通信を暗号化する証明書。 Let’s Encrypt の証明書は「Our default certificates are valid for 90 days.」と定められていて、定期的な更新が前提です。更新が止まると、ブラウザに警告が出てサイトを開けなくなることがあります。
- OSやサーバー製品。 Microsoft の製品には、「リリース時にサポート終了日が定義された製品」があります。製品ごとに期限が違うので、使っている製品の期限を確かめる必要があります。
保守費には、こうした期限を見張って対応する作業が含まれることがあります。逆に言えば、含まれていない場合は、誰かが見ていないと期限切れに気づけません。
機能追加や大きな更新も保守費に入るのか?
入らない場合があるので、確認してください。 保守を今の状態を保つ作業と考え、新しい機能を作る作業は別に見積もることがあります。境目は契約によって違います。
特に分かれやすいのは次の3つです。
| 作業 | 分かれやすい理由 | 聞き方 |
|---|---|---|
| 納品後に見つかった不具合の修正 | 無償で直す期間と保守の範囲が重なる | 無償の期間はいつまでで、その後は保守費の範囲か |
| OSや実行環境の大きな版の更新 | 動作確認や手直しの量が大きい | 保守費の範囲か、別見積もりか |
| 法改正や業務変更に伴う変更 | 機能追加に近い | どの程度までが範囲か |
「実行環境の大きな更新は別見積もり」という契約でも、それ自体が悪いわけではありません。あらかじめ分かっていれば、数年ごとの費用として予算に入れられます。
サーバー代やクラウド代は保守費に入っているのか?
作業の費用とは別に確認が必要です。 保守費にサーバー代が含まれる見積もりも、別に実費で請求する見積もりもあります。
クラウドの場合は、料金が毎月同じとは限りません。AWS の解説には「固定費 (データセンターや物理サーバーなど) を変動費に変換し、IT を使用した分のみ支払うことができます」とあります。使う量が増えると請求も増える仕組みです。
次の点を聞いておくと、後から差が出にくくなります。
- サーバーやクラウドの契約名義は自社か、開発会社か
- 料金は保守費に含まれるか、実費か
- 利用が増えて料金が上がった時、誰が負担するか
- ドメインや外部サービスの料金は誰が払うか
名義は解約の時にも関わります。開発会社の名義のまま解約すると、データや環境の引き継ぎに手間がかかることがあります。
契約前に何を確認すればいいのか?
次の10項目を質問し、答えを見積もりか契約書に書いてもらってください。 口頭の説明だけでは、担当者が変わった時に分からなくなります。
- 月額に含まれる作業の一覧
- 含まれない作業の例
- 受付時間と連絡手段(夜間や休日の扱い)
- 障害時の対応の目安は、努力目標か約束か
- 小さな修正の範囲と月の上限
- OSや部品の更新は誰が判断し、誰が行うか
- サーバー代などの実費の扱い
- 毎月、何をしたかの報告があるか
- 契約期間、更新、解約の条件
- 解約時に受け取れるもの(ソースコード、設計資料、管理者アカウント、データ)
8番を聞くのは、報告がないと、作業が発生しなかった月と、作業をしたのに伝えられていない月の区別がつかないからです。
契約書の土台としては、IPA(情報処理推進機構)が公開する「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>」が参考になります。IPAはこの第二版について「中立的な立場でユーザ企業・ITベンダいずれかにメリットが偏らない契約書作成を目指している」と説明しています。ひな型も公開されているので、手元の契約書と見比べて、抜けている項目を探す使い方ができます。
保守費が妥当かどうかはどう判断するのか?
金額だけではなく、作業の範囲をそろえて比べます。 範囲が違う2社の金額を比べても、判断の材料になりません。次の順に進めてください。
- 上の表の作業のうち、自社に必要なものを決める
- 止まった時の影響を考える(夜間に止まっても翌朝でよいか)
- 同じ条件で見積もりを出してもらう
- 必要のない作業があれば、外せないか聞く
社内ツールで、止まっても翌営業日の対応でよいなら、夜間の受付は不要かもしれません。逆に、顧客が使うシステムなら、受付時間の方を優先する判断もあります。
保守を付けないという選択もありますが、その場合は上で挙げた部品の期限を誰が見るのかを決めておく必要があります。社内に担当者がいないなら、期限の管理だけでも誰かに任せる形を検討してください。
まとめ
- 保守費の中身は見積もりごとに違うので、作業の単位で確認します。
- 自社が何も変えなくても、実行環境や証明書の期限に対応する作業が発生します。
- 機能追加、大きな更新、サーバー代は、別費用かどうかを確認します。
- 確認した内容は見積もりか契約書に書いてもらいます。
- 比べる時は、作業の範囲をそろえてから金額を見ます。
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