社内の問い合わせ対応にAIを入れる時、自社で作るかSaaSで済ませるかはどう判断するのか

公開日:2026-11-05/AnchorUp コラム

結論:社内の規程やマニュアルが Microsoft 365 か Google Workspace に集まっていて、閲覧権限も整理されているなら、まず今の契約に足せるSaaSで試すのが順当です。 自社で作る意味が出るのは、複数の業務システムをまたいで答える必要がある時、回答だけでなく申請などの操作までつなげたい時、SaaSの条件では社内の情報管理のルールを満たせない時です。

社内の窓口で質問を受ける社員の後ろ姿

判断を分けるのはAIの賢さではなく、回答の元になる文書がどこにあり、誰に何を見せてよいかが決まっているかどうかです。

この記事では、総務や情報システムを兼任している担当者が、自社で判断できるように基準を整理します。料金は2026年11月5日に各社の公式ページで確認した表示です。

自社で作るかSaaSか、どこで分かれるのか?

次の表で、右の列に当てはまる項目が1つもなければ、SaaSから始めて差し支えありません。 右の列に当てはまる項目が多いほど、自社で作る理由が強くなります。

確かめる点 SaaSが合う状態 自社で作る理由になる状態
回答の元になる文書 SharePoint や Google ドライブに集まっている 複数の業務システムや独自のデータベースに分かれている
閲覧の制限 今のファイル共有の権限で足りる 役職や部署ごとの細かい制限を、別の仕組みで持っている
AIにさせたいこと 質問に答える 申請の起票や台帳の更新まで行う
情報管理のルール SaaSの規約と保管条件で問題がない 社内規程や取引先との契約で、保管先に指定がある

なお、自社で作るなら、不具合の調査や改修を続ける人か委託先の確保が前提です。確保できない時は、右の列に当てはまっても、SaaSの範囲で工夫する方が現実的です。

自社で作る理由になる4つの状態を数えます。0ならSaaSから始め、多いほど自社で作る理由が強くなりますが、不具合の調査や改修を続ける人か委託先の確保が前提です。

「質問に答えるだけ」なのに自社で作り始めると、既製品にある機能を作り直すことになりがちです。最初に問い合わせの中身を分類し、回答だけで済むものがどれだけあるかを数えると判断しやすくなります。

SaaSで済むのはどんな会社か?

ファイルの置き場所と閲覧権限が整っている会社です。 Microsoft 365 や Google Workspace に組み込まれたAIは、利用者本人が見られる範囲の情報を使って答える設計になっています。

Microsoft は公式の説明で「個々のユーザーが少なくとも表示アクセス許可を持っている組織データのみを表示します」と述べています。Google も、利用者にアクセス権限がある Workspace 内のコンテンツに、プロンプトに応じてアクセスすると説明しています。

ここで注意が要ります。AIが権限を守るということは、共有設定が緩ければ、その緩いまま見えるということです。 給与表や人事評価のファイルが全社共有のフォルダに残っていれば、本来読むべきでない社員の質問に答える材料になり得ます。これはAIの不具合ではなく、今まで検索で見つからなかったものが見つかるようになるだけの話です。導入前に、機密のファイルの共有範囲を見直してください。

費用は何で比べればいいのか?

月額の表示だけでなく、人数で増える費用か、使った量で増える費用かで比べます。 3つの形を、確認した料金で並べます。

形 課金の単位 確認した料金 費用が増える要因
Microsoft 365 Copilot Business 利用者ごとの月額 年払いの月額相当で¥3,148から。2026年12月31日までの割引は¥2,698から(初年度のみ)。消費税別。対象の Microsoft 365 法人プランへの追加 人数
Copilot Studio Copilot クレジット 機能ごとに消費量が決まる 質問の数と使う機能
AIのAPIを使って自社で作る 入出力のトークン(文字数に近い単位) Claude Sonnet 5.5 は入力 $2、出力 $10(いずれも100万トークンあたり) 質問の数と文書の長さ

Microsoft 365 Copilot Business を30人で使うと、上の開始価格で月額94,440円、割引の適用中は月額80,940円です(年間契約)。質問が少ない月でも同じ額がかかります。

Copilot Studio は Microsoft の説明では、社内データを参照するエージェントが、1回の複雑な質問に12クレジットを使う例が示されています。Microsoft 365 Copilot のライセンスを持つ利用者の分は、別の扱いです。また、毎月の購入容量について、未使用のクレジットは翌月に引き継がれません。見積もりの際は、公式の見積もりツールで質問数を入れて確かめてください。

APIは、次の仮定で計算できます。1回の質問で、関連する文書を含めて入力3,000トークン、回答500トークンを使うとします。

項目 計算 金額
入力 3,000 ÷ 1,000,000 × $2 $0.006
出力 500 ÷ 1,000,000 × $10 $0.005
1回の合計 $0.011
月1,000回 $11

この例で分かるのは、小さな規模なら、AIの利用料そのものは判断の決め手になりにくいということです。トークン数は文書の量で変わりますし、この計算には文書の検索に使う仕組みやサーバーの費用は入っていません。それでも、自社で作る費用の大半は、作る時間と保ち続ける時間になります。比べる時は、AIの利用料ではなく「誰が何時間かけて保つのか」を見積もりに書いてもらってください。

費用の増え方の違い。Microsoft 365 Copilot Businessは30人で月額94,440円、割引の適用中は月額80,940円で質問の数によらず同じ額で、AIのAPIは質問の数と文書の長さで増え、本文の仮定で月1,000回なら$11です。文書の検索の仕組み、サーバー、作る時間と保ち続ける時間の費用は含みません。

自社で作ると、何が追加の仕事になるのか?

権限の確認、モデルの入れ替え、回答の品質確認の3つが、ずっと残る仕事になります。

  1. 権限の確認:SaaSなら既存の権限をそのまま使えますが、自社で作るなら「この社員にこの文書を見せてよいか」を質問のたびに判定する処理を自分たちで作ります。ここに漏れがあると、見せてはいけない内容を回答してしまいます。
  2. モデルの入れ替え:AIのモデルには提供終了があります。Anthropic の場合、公開モデルの提供終了は少なくとも60日前に通知すると案内しており、終了日を過ぎたモデルへの要求は失敗します。その期間内に新しいモデルへ切り替え、回答が変わらないかを確かめる作業が発生します。
  3. 回答の品質確認:想定問答の一覧を持ち、文書やモデルを変えるたびに同じ質問で確かめます。

発注するなら、作るところまでで契約が終わると、この3つを担う人がいなくなります。保守の範囲にどこまで含まれるかを、契約前に確かめてください。

入力した社内情報はAIの学習に使われないのか?

法人向けの契約では、初期設定で学習に使わないと各社が説明しています。ただし、無料版や個人向けプランの説明とは別です。 社員が個人のアカウントで使っている場合は、ここに挙げた説明の対象にならないと考えてください。

提供元 公式の説明
Microsoft Microsoft Graph 経由でアクセスされるプロンプト、応答、データは、基盤モデルの学習に使わない
Google お客様のコンテンツは、許可なくドメイン外で生成AIモデルのトレーニングに使用されない
Anthropic 法人向け製品の入出力を、初期設定ではモデルの学習に使わない。ただし、フィードバックを送った場合などは例外がある

人事や顧客の個人情報を回答の元にするなら、個人情報保護委員会が公表している生成AIサービスの注意喚起も確認し、個人情報の扱いを社内の担当者と決めてから進めてください。

導入前に何を確かめればいいのか?

次の順に進めると、「SaaSで足りるか」を自社の問い合わせで判断できます。

  1. 直近1か月の問い合わせを書き出し、「文書を読めば答えられる」「人の判断が要る」「手続きの代行が要る」に分ける
  2. 「文書を読めば答えられる」ものについて、元の文書がどこにあるかを一覧にする
  3. 給与、人事評価、契約書のフォルダの共有範囲を見直す
  4. 実際の問い合わせを20問選び、正しい答えを先に書いておく
  5. SaaSの試用環境に同じ20問を入れ、正答の数と、見せてはいけない内容が出ないかを確かめる
  6. 回答が間違っていた時に、どこへ聞けばよいかを社内に示す
  7. 足りなかった質問の理由を分類する

手順7で、理由の多くが「文書が古い」なら、作り直しても解決しません。先に文書を直します。理由の多くが「業務システムのデータが要る」「手続きまで行いたい」なら、自社で作るか、SaaSに連携機能を足す検討に進む根拠になります。

まとめ

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参考(一次情報)

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