IT導入補助金は社内ツールの受託開発に使えるのか、申請前に確認することは何か

公開日:2026-11-05/AnchorUp コラム

結論:公式の資料を読む限り、社内ツールを一社向けに新しく作る受託開発は、この補助金の対象になりにくい仕組みです。 補助の対象は、IT導入支援事業者があらかじめ事務局に登録した製品(ITツール)で、公式の登録要領は「特定の顧客向けに限定され、一般市場に販売されていないもの」などを登録の対象外としています。個別の案件が対象になるかは事務局の判断なので、ここでは「対象です」「対象外です」とは言い切らず、発注の前に確かめる点を整理します。

申請書類の準備

この記事は、2026年11月5日に公式サイトと公募要領を確認した内容です。 対象は「デジタル化・AI導入補助金2026」の通常枠で、第7回公募以降の公募要領(2026年10月9日更新)と、ITツール登録要領(2026年10月29日更新)を読みました。制度は年度や公募回で変わるので、申請前に最新の資料を確かめてください。

IT導入補助金は今どうなっているのか?

2026年の制度の名前は「デジタル化・AI導入補助金」です。 公式サイトでは「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」と表記されています。古い名前で検索すると過去の年度の情報が混ざるので、公式サイトの2026年度の資料を基準にしてください。

通常枠の補助の条件は次のとおりです。

項目 内容
補助率 1/2以内。条件を満たす場合は2/3以内
補助額 1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下
補助対象 ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、オプション、役務

なぜ受託開発は対象になりにくいのか?

申請の前に、製品が事務局に登録されている必要があるからです。 公式の説明では、対象となるITツールは事前に事務局の審査を受け、補助金のホームページに公開されているものです。申請者は、登録された製品の中から導入するものを選びます。発注者の要件に合わせて新しく作るものは、発注の時点で製品として存在しないので、この流れに乗りにくいと読めます。

受託開発が対象になりにくい理由。すでに販売されている製品のうち、事前に登録されたものは申請者が選べるので対象になり得ますが、要件に合わせて新しく作るものは発注の時点で製品として存在せず、登録の流れに乗りにくいです。

ITツール登録要領では、ソフトウェアの登録要件として「一般に販売が開始されていること」を挙げています。さらに「ITツール登録の対象外となるもの」として、次の項目を並べています(13ページ)。

登録要領の記載 社内ツールの発注で確かめること
製品が完成されておらず、スクラッチ開発を伴うソフトウェア 見積もりの中心がゼロから作る開発になっていないか
過去に特定顧客向けに開発したコード(開発実績)を他の顧客に再利用し、その顧客の要件に合わせ追加スクラッチ開発を伴うもの 「似たものを作ったことがある」という提案が、これに当たらないか
業務プロセスに影響を与えるような大幅なカスタマイズが必要となるもの 製品に大きな改修を足す前提になっていないか
特定の顧客向けに限定され、一般市場に販売されていないもの 自社専用の開発になっていないか
すでに導入済みのソフトウェア等の機能を追加・拡張することを目的としたもの 今使っているツールの改修が目的ではないか

複数の事業者が連携する「複数者連携デジタル化・AI導入枠」は、事前登録の扱いなどが異なります。一社の社内ツールの発注とは前提が違うので、この記事では扱いません。

では、どんな導入なら対象になり得るのか?

すでに販売されている製品を選び、その導入の設定や保守を頼む形です。 自社の業務に近いクラウドサービスがあるなら、受託開発の代わりにそれを使えないかを先に検討します。

検討する形 補助金との関係
登録済みのクラウドサービスを導入する クラウド利用料は最大2年分が補助対象
製品の導入設定、マニュアル作成、研修を頼む 製品と併せて導入する役務として対象に含まれる
AIを搭載した製品を導入する 公式サイトは、定められたプロセスを持つ生成AI搭載ソフトウェアも登録が可能としている
自社専用の新規開発を頼む 上の表の対象外の項目に当たらないか確認が要る

「AI導入補助金」という名前でも、AIなら何でも対象になるわけではありません。公式の説明では、登録要領で定義するプロセスを持ったうえで生成AIの機能を搭載したソフトウェアが登録できる、という書き方です。

申請前に何を確認すればいいのか?

次の順に確かめてください。特に3は、発注の順番を間違えると補助を受けられません。

  1. 製品が登録されているか:公式サイトの「ITツール検索」で、製品名を調べる。見積もりにある製品名と番号を確かめる
  2. 一緒に申請する事業者がいるか:申請には、事務局に登録された「IT導入支援事業者」と組む必要がある。発注先が登録されているかを聞く
  3. 交付決定の前に契約、発注していないか:公募要領(通常枠)は「交付決定前に契約、発注、納品、支払い等を行った場合は、補助金を受けることができない」としている。契約も発注も、交付決定の通知を受けてから行う
  4. GビズIDプライムとSECURITY ACTIONがあるか:どちらも申請の要件。発行までの期間は、GビズIDプライムがおおむね2週間、SECURITY ACTIONの宣言済アカウントIDがおおむね2〜3日と案内されている
  5. 事業計画と賃上げの要件を満たせるか:3年の事業計画を作る。公募要領では、労働生産性の目標に加え、補助額が150万円以上の申請やIT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者には、1人当たり給与支給総額などの要件がある。第7回公募からこの部分に制度変更があった
  6. 達成できなかった時の扱いを理解しているか:公募要領は、賃上げ要件が事業計画終了時点で達成できなかった場合(期間内に報告しなかった場合を含む)は「補助金の返還を求める」としている。返還額は補助金交付額が上限で、付加価値額が増えず3年の過半数で営業利益が赤字の場合や天災などは返還を求めないとの定めもある(1人当たり給与支給総額の要件の場合。最低賃金の要件は条件が異なる)。入ってくる金額だけで資金計画を立てない
  7. 他の補助金と重複していないか:国などの他の補助金と重複する事業は対象に含められない

今から申請して間に合うのか?

2026年度の受付は終わりが近づいています。 公式サイトで確認できた日程は次のとおりです。

締切と交付決定の時系列。7次は2026年12月1日締切で2027年1月19日、8次は2027年1月7日締切で2月17日が交付決定の予定で、契約と発注は交付決定の通知を受けてから行います。

項目 日時
通常枠の7次締切 2026年12月1日(火)17:00(交付決定は2027年1月19日の予定)
ITツールの新規登録申請の締め切り 2026年12月9日(水)17:00
通常枠の8次締切(交付申請の最終締め切り) 2027年1月7日(木)17:00(交付決定は2027年2月17日の予定)

最終締め切りは、2027年1月から受付を始めるスマートレジ類型とPOSレジ類型には適用されません。入力途中で期限を超えた申請は破棄されます。

GビズIDプライムの発行におおむね2週間かかることを考えると、まだ取得していない会社は早めに動く必要があります。発注先がこれから製品を登録する場合は、12月9日の締め切りも関わります。

翌年度の制度については、11月5日に公式サイトのトップページ、事業スケジュール、資料ダウンロードの各ページを確かめましたが、掲載を確認できませんでした。翌年度に同じ形で続く前提で計画を立てないようにしてください。

受託開発が本当に必要な時はどうすればいいのか?

別の補助金を調べるか、補助金を前提にしない計画を作ります。 候補の1つが中小企業省力化投資補助金の一般型です。公式サイトは「オーダーメイド性のある多様な設備やシステムを導入可能」と説明しており、対象経費に機械装置・システム構築費を挙げています。

ただし、この制度は人手不足の解消に向けた省力化を目的とした事業計画が前提です。第9回公募の申請受付は12月上旬の開始予定と案内されています。社内ツールの受託開発が対象になるかは、公募要領を読み、事務局に確かめてください。

補助金がなくても進められるかも、先に考えておくと判断がぶれません。補助金は後から支払われる精算の仕組みとして計画し、採択されなくても投資する価値があるかを基準にすると、制度が変わっても計画が崩れにくくなります。

まとめ

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参考(一次情報)

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