社内ツールを外注した時、ソースコードの著作権は誰のものか?契約書のどこを見るか

公開日:2026-11-05/AnchorUp コラム

社内ツールの開発を外注しても、費用を払っただけでソースコードの著作権が発注側に移るわけではありません。基本の考え方は、作った側に権利が発生し、発注側が権利を持つには契約で譲渡を受ける必要がある、というものです。 ですので、見るべきは契約書の「著作権の帰属」や「知的財産権」の条項です。

書類フォルダとUSBメモリの受け渡し

この記事は一般的な情報の整理で、個別の契約の解釈を示すものではありません。手元の契約の判断は、弁護士など専門家に確認してください。

費用を払えば著作権は発注側のものになるのか?

なるとは限りません。 著作権法は、著作者を「著作物を創作する者」と定め、著作者が著作権を持つとしています。プログラムも著作物に含まれます。

自社の社員が仕事で作ったプログラムなら、話は変わります。第15条第2項は「法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする」と定めています。

外注の場合は、作業をするのは開発会社の人なので、この条文で発注側が著作者になるわけではありません。著作権情報センターのQ&Aでも、業者に図面の作成を依頼した例について「契約によって著作権の譲渡を受ける必要がある」と説明しています。図面の例ですが、依頼して作ってもらったものは契約を見る、という点はプログラムでも同じ方向で考えられます。

状況を整理すると次のとおりです。

誰が作ったか 権利の考え方
自社の社員が仕事で作った 別段の定めがなければ、自社が著作者になる
開発会社が作った 契約で譲渡を受けなければ、開発会社側に残ると考えるのが基本
フリーランスに依頼した 開発会社の場合と同じく、契約の確認が必要

また、ソースコードのデータを受け取ることと、著作権を持つことは別の話です。手元にコードがあっても、権利が移っているとは限りません。

契約書のどこを見ればいいのか?

「著作権」「知的財産権」「権利の帰属」「納入物」「成果物」という語がある条項を探します。 基本契約書と個別契約書に分かれている場合は、両方を見てください。注文書の裏面や約款に書かれていることもあります。

条項を見つけたら、次のどの形かを確認します。

契約の書き方と著作権の行き先。譲渡の定めがなければ開発会社側に残ると考えるのが基本で、譲渡なら発注側へ移り、開発会社に残る形では発注側は利用の許可を受け、共有なら双方が持ちます。

形 内容 発注側ができること
発注側へ譲渡 著作権が発注側に移る 条項の範囲で、改修や別会社への依頼を検討しやすい
開発会社に残る 発注側は利用の許可を受ける 原則は許可の範囲で考える。改修の可否は要確認
共有 双方で権利を持つ 使い方に相手の同意が要る場合があるので条件を確認

どの形が正しいということはありません。開発会社に権利が残る形でも、社内で使い続けるだけなら足りることがあります。自社で今後どう使いたいかに合わせて選びます。

書き方の参考には、IPA(情報処理推進機構)が公開する「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」があります。受託開発のひな型も公開されているので、手元の契約書の条項と見比べられます。

「著作権を譲渡する」と書いてあれば足りるのか?

足りない場合があります。確認する点は2つあります。

1つ目は、第27条と第28条の書き方です。 著作権法第61条第2項は、「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する」と定めています。

第27条は翻案(元の作品を作り変えること)などの権利、第28条は作り変えたものの利用に関する権利です。ツールの改修に関わる可能性があるので、「すべての著作権を譲渡する」とだけ書かれていないかを見ます。契約書では次のように書かれていることがあります。

著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)を譲渡する。

2つ目は、著作者人格権です。 第59条は「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない」と定めています。著作権情報センターの解説でも、著作権の譲渡を受けた場合について「著作者人格権は著作者に残ります」と説明しています。

著作者人格権には、意に反する改変を受けない権利が含まれます(第20条)。ただし、プログラムをより効果的に実行できるようにするために必要な改変など、適用されない場合も定められています。契約書には、開発会社が「著作者人格権を行使しない」と書かれていることがあるので、その有無を確認します。

譲渡の対象にならない部分はあるのか?

あります。 納品物の全部が、その案件のために新しく作られたとは限らないからです。

納品物の入れ子。その案件のために新しく作った部分は譲渡の条項を読み、開発会社の既存の部品、オープンソースの部品、AIが生成したコード、再委託先が作った部分は別に確認します。

部分 確認すること
開発会社が以前から持っている部品 譲渡の対象外か、利用の許可はあるか
オープンソースの部品 使っている部品の一覧と、ライセンスの条件
AIが生成したコード AIの使用の有無、他者のコードとの一致の確認。指示の内容によっては著作物と認められない場合もある
再委託先が作った部分 再委託先の権利が開発会社に集まっているか

オープンソースは、公開されたプログラムをライセンスの条件に従って使うものです。譲渡の条項があっても、部品の権利が発注側に移るわけではありません。

AIが生成したコードについては、GitHub の説明に、Copilot が GitHub 上の公開コードと一致するコードを生成することがあるとあります。そのため、開発会社がライセンスをどう確認しているかを聞いておきます。

なお、著作権で保護されるのは表現の部分です。第10条第3項は、プログラムの著作物の保護が「プログラム言語、規約及び解法」には及ばないと定めています。

権利の確認を怠ると、どんな時に困るのか?

開発会社との関係が変わる時に問題になります。 次のような場面です。

社内で使い続けるだけなら問題にならない場合もあり、影響は使い方によって変わります。ただ、後から権利を買い取る交渉は、費用も時間もかかる場合があります。契約前に決めておく方が負担は小さくなります。

契約前に何を確認すればいいのか?

次の順に確認し、答えを契約書に残してください。

  1. 著作権は誰に帰属するか(譲渡、開発会社に残る、共有のどれか)
  2. 権利が移る時期(検収の時か、支払いの完了時か)
  3. 対象の範囲(ソースコード、設計書、テスト用のコード)
  4. 第27条と第28条の権利を明記しているか
  5. 著作者人格権の扱い
  6. 開発会社の既存の部品について、使い続ける許可があるか
  7. オープンソースの一覧を受け取れるか
  8. AIを使う場合の扱いと確認の方法
  9. 再委託の有無と、その権利の扱い
  10. ソースコードと、ビルドに必要な資料を受け取れるか

10番は権利とは別の確認ですが、実務では同じくらい重要です。権利があっても、動かすための資料がないと改修を頼めないことがあります。

権利の移転を第三者に主張したい場合の制度もあります。第77条は「著作権の移転」について、「登録しなければ、第三者に対抗することができない」と定めています。文化庁の登録制度のFAQに概要があります。プログラムの登録は、ソフトウェア情報センターが窓口です。社内ツールで登録まで行うかどうかは、用途に応じて判断してください。

すでに契約が済んでいて、権利の定めがない場合は、覚書を追加できないか開発会社に相談する方法があります。

まとめ

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参考(一次情報)

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